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穂村弘さん監修の「はじめての短歌」に呻りっぱなし ~穂村弘さんってどんな人?

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「短歌で自己表現をしたい」「短歌がもっと上手になりたい」と思う人には最適な教科書であるのは勿論、穂村弘さんならではの文体が読み物としても面白い。それがはじめての短歌。いろんな人に穂村さんの魅力を知ってほしいと思う。

穂村弘さんってどんな人

穂村弘さんは曇天の午後四時が怖ろしくて、世界に対する自分のおさまりの悪さを常日頃から感じている変な人。濁点がたくさん打てる言葉があるんだなぁと「ずがっどざわやがゴガゴーラ」というフレーズを妄想したりする、やっぱり変な人。生まれてから大学を出るまで誰にもあだ名をつけてもらえなかったことを気にしている穂村さん、やっぱりやっぱり変な人。

自意識の強さが独特の観察眼となって、世界を独特の言葉で表現できるエッセイスト、そして歌人である。

たとえばこんな書き出しで始まる文章はどうか。

私のエスプレッソがこんなに苦いのは何故なのだろう。果実の薫りとキャラメルの味わいの飲み物が、地獄の汁に感じられるのは何故か。それは、おそらく、私自身がまだエスプレッソに釣り合うほどの素敵レベルに達していないからだ。私の素敵レベルは低い。

本当はちがうんだ日記の「エスプレッソ」より。

「私のエスプレッソ」という表現に一瞬で心を奪われる。そしてエスプレッソを地獄の汁だと感じられてしまう味覚が憎い。素敵レベルって何なんだ。

穂村さんは世界をすべてこんな風に表現してしまう。変な人、ダメ人間。なのに、嫌味の無い自虐表現がむしろ清々しくて、もっともっとその世界に触れてみたくなる中毒性のある人物だ。頭のいい人の書く「痛さ」はこんなに面白いものなのかと、本当はちがうんだ日記絶叫委員会は一気に読んでしまったのを覚えている(そして今でも時々、安心したくて読み返してみたりする)

穂村弘さん監修の「はじめての短歌」とは

そんな穂村弘さんは短歌の世界でも有名な人。はじめての短歌という本のなかでも相変わらず面白くいエピソードを織り交ぜながら短歌の魅力を伝えてくれている。

秀歌を紹介しながら、わざわざそれを「改悪」してみる構成は、その歌が何故良いのかということをわかりやすく教えてくれる。文芸の入門書の大抵は、寄せられた句や歌に対して添削例が紹介されるパターンになっている。これはこれで勉強になるのだけれど、穂村さんが自ら「こうすると悪くなっちゃう」という例を嫌味なく紹介してくださるおかげで、一つ一つのポイントがすっと頭にはいってくる。

たとえば。

「煤」「スイス」「スターバックス」「すりガラス」「すぐむきになるきみがすきです」/やすたけまり

「す」という言葉でつなげあう意地悪なしりとりの様子が短歌になったもの。穂村さんはこれを改悪して

「煤」「スイス」「スターバックス」「すりガラス」「すてきなえがおのきみがすきです」

と書いて、「愛の告白として有効なのは原作のほう」と教えてくれた。つまり、歌の味わいを説明してくれている。な・る・ほ・ど、と、呻るばかりであることがこの一例からもご理解いただけるのではないだろうか。自分はこんな風に心を言葉に変換できているのだろうかと、色々考えさせられる。

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穂村さんの本は、どの本を読んでもほっとさせられる。嫌味がないというのは、なんと素晴らしいことなのか。

短歌に興味がない人も、エッセイはなんだか綺麗すぎると思う人も、この痛くてどうしようもない、そして清々しい穂村ワールドを堪能してほしいと思う。

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