夏が終わるころには翌年のカレンダー印刷の話があり、秋が深まるころには年賀状のご依頼をいただくようになる。
鐘の音が街中に響き渡るころにはもう、年度末の春色をした仕事の話になっているのがこの業界の常で、不思議な時間をずっと生きている。
光速に過ぎていく時間は、ときに残酷だ。僕を構成した居場所は、僕の永遠の思い出になってしまった。節目も知らないで、ありがとうも言えないままで。
説明して理解してもらいたいこともあれば、感じとってほしいこともある。そんなときの17文字や31文字はとても有効で、やっぱり僕は、この短詩文芸の魅力を伝えていくことに注力したい。新しい事務所ではそんな試みもしてみたくて、レイアウトを話し合ったりしている。
移転に伴うあれこれを考えては、すぐに行き詰まる。面積の限界、予算の限界、効率の限界、人員の限界。僕はいつも、メンバーに何かを考えてほしいとき、(こんな方向にいってほしい)というゴールをイメージしながら投げかけようにしている。ただ、今回の移転のことについては純粋に彼らの力を借りるつもりで、何の仮説も持たないままに協力を求めている。大きな機材の移動に自分たちの力だけでどこまで出来るか検証しようと、腹ばいになって構造を調べてくれている姿にはすこし感動した。有り難い、ありがとう。
乾燥して、空気が澄んで、この時期の黄昏、夕焼けは格別。一年の終わりの一日の終わりの色はこんなにも優しい。仕事で関わる方々の「いま」と「これから」は、必ずしも安泰とはいえず胸の苦しくなるような話もいくつかあるけれど、最悪の事態を想定しながら最良の結果を得られるような二人三脚でありたいと願う。
必要とされることに感謝して。