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使い古された言葉をテクニックとして使うことの危惧 ~「好評」という言葉の与える印象

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ボロボロになったのぼりが売れ残った土地に立っている。冷たい風に吹かれて、かろうじて「好評分譲中」という文字を読むことができた。

とあるアーティストのコンサートチケットの追加販売についてメールが届いた。2か月前に販売開始となったはずのコンサートだが、どうやら「好評なので」席を追加したのだそうだ。

僕たちは、もう「好評」という言葉を鵜呑みにするほど馬鹿ではなくなった。それでも、伝えたい側は安易に「お得」や「好評」という使い古された言葉を用いて、僕たちの心に触れていこうとする。そして「景気が良くなっただなんて嘘だよ、商売は厳しいよ」という経営者の「実態っぽい」苦悩を耳にすることになる。

いいものが当たり前に世の中に存在するようになり、いいものを作るだけで売れる時代ではなくなった。同様に、ありとあらゆる情報と表現の洪水にさらされていて、昔と同じままでは誰も反応してくれないようになった。分かっているはずなのに、まだ残る、本当に小さなパイだけを目指して食らいついていこうとする。だから競争に負けて、商売の舞台から降りていくことになるのだが、その原因を自分の中に見つけられず、相手のせいにしようとしてしまう。言葉を選ぶということは相手の心を想像するということなのに、その相手に橋を架けようとする瞬間の言葉選びを疎かにして商売の厳しさを口にしたとて、それは違うのではないかな、と僕はつい、考えてしまう。

細かいことを言うよね、と僕を笑う人がいる。それでも僕は、その細かいほんの違いが51:49となって、選ばれ、残っていくために必要なことなのではないかと確信をしている。それが僕の仕事。その違いを伝え続けることが使命だし、その違いを価値として認めてくれる人だけが、これからの自分のお客さんになっていくのだろうと思う。