退職願が届いた
といっても
本人の印鑑もなければ自筆署名もない
封筒の筆跡は明らかに本人以外のものだ
「意思」の存在しない法律行為は無効なんだよ
それ以前に
会社としては解雇扱いにしているわけで
たとえこれが本人の書いたものであっても
なんの意味も成さない
私文書偽造罪と偽造私文書等行使罪
本人の意思を受けて(所在を知って)
失踪以後の事情を知った上で
会社との関係性を断つために
代理人がこれを書いたなら
それはそれでまた
異なる法律の問題に至る可能性がある
*
誰が書いたのか
どういう目的で送ってきたのはか知らない
ただ
説明が不足しすぎていて
穏便に済ませたいと願う自分の想いは
踏みにじられたんだな
と思ったことは
正直に書いておきたい
*
状況は悪くなっていく
本人が不在のまま
物語が勝手に進んでいる
僕は穏便に済ませたいと「待った」
ちがう誰かは「放置した」と訝しんだ
それでも本人を守ってやりたいと願ったのは
共通の想いであったはずなのに
立場と認識のちがいが
対立の構造を生み出していく
むなしいよ
*
このあと
幾日かの猶予を経てもなお
それなりの対応がない場合の
フローは決まっている
「ごめんなさい」で始まらなければ
誰も救われない
そう書いてきたけれど
やっぱりそうなっちゃうんだろうか
*
あらそうことが目的ではない
だから僕は
かなしい未来になることを避けたくて
本来ここに記すべきではない「手の内」も
示している
捕まってほしいわけじゃない
ごめんなさいを示してほしい
更生してほしい
穏便に
何度も呪文のように唱え続けている
穏便に
それだけのことを
ちゃんと協議して決められたらいいと思っている
消えない過去に悲しみの楔を打ち込んでいくよりも
迎える未来に小さな橋を架けていきたいよ