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実業の反対語である虚業という概念について

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学生13人が文章の書き方や取材のコツを質問。あさのさんは、「小説は五感で書くもの。野球の話なら実際にボールを握り、感触を確かめた」とアドバイス。「自分が経験していないと、作品は生み出せない。色々なことを体験して」と語った。

引用元:「小説、五感で書くもの」 あさのあつこさん : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

小説家のあさのあつこさんが武庫川女子大で開かれたイベント「作家と語る」で学生からの質問に答えたこと。「五感で書く、自分が経験していないと作品は生み出せない」。

実業の反対に虚業という概念がある。辞書によれば虚業とは投機のような堅実性のない事業のことで、あぶく銭を得るような意味イメージで使われるとある。

虚業という言葉自体に明確な定義はなくて、僕は虚業という言葉を「経験を伴わない知識の受け売り」の状態を表すときに便利に使わせてもらうことにしている。どこかで聞いたようなことをそのまま受け流して生業にしようかと思うとき「あぁ、いま、自分は虚業をしようと考えていた」と戒めにも用いる。自分の経験していないことを相手に渡すこと自体は、売るトークを考えれば難しいことでもない。大切なことは渡したあとに罪悪感が伴わないかどうかで、顧みて、僕自身もいくつかの罪悪に囚われるし、そんな風なものを僕に渡そうとする存在には強い嫌悪感を抱いてきたという経緯がある。

知識や情報を伝達するということは、たしかに商売になる。ただ、売って終わってしまってはいけない。水にも似た透明なそれらを売ることを生業とするのであれば、その商品を手にすることの期待を抱かせなければいけないし、その商品を手にした人の変化を明示して伝え続けていく必要がある。虚が実になるかどうかは、誰が見ても明らかな効果をもたらしている変化と実績。それが出来なければ、商売はビジネスという冷たい響きに姿を変えてしまう。

「肩こりが良くなる3つの方法」と「肩こりが良くなった3つの方法」であれば、どちらが知識で経験か。同じタイトルが並んだとき、どちらの本を手に取りたくなるか。どちらのリンク先に飛びたくなるか。「経験」は言葉にも表れる。だから響く。それを肝に銘じていたい。