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法人ではない個人事業主が「会社」「当社」「弊社」「自社」という言葉を用いることについて

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個人事業を営まれる方から、自分のお店や事務所の呼称について相談を受けることがある。

第七条  会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

引用元:会社法

会社法第7条(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)には「会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない」という決まりがあって、屋号の中には「会社」という文字は使ってはならないとされている。また会社法978条2項では、この7条に違反した場合は100万円以下の過料(行政罰)に処するということも明記されている。

第九百七十八条  次のいずれかに該当する者は、百万円以下の過料に処する。
一  第六条第三項の規定に違反して、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字をその商号中に用いた者
二  第七条の規定に違反して、会社であると誤認されるおそれのある文字をその名称又は商号中に使用した者
三  第八条第一項の規定に違反して、他の会社(外国会社を含む。)であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用した者

引用元:会社法

つまり屋号のなかに「会社」や「社」という文字を用いると、過料(≠罰金)を払う必要がありますよ、というわけで「便利会社にしばた」「にしばた面白会社」という書き方は登記されていなければ認められないということだ。

ここで問題になるのは「屋号のなかに用いなければ行政処分の対象にはならないのか」という点。たとえばホームページやブログ、あるいは会話のなかで、法人ではないものが「会社」と誤認させる可能性のある表現を用いた場合である。「当社では」「弊社の制作実績には」「自社の特長は」といったような書き方は、屋号のなかにさえ用いなければ許されるのだろうか。

結論としては詐欺行為として相手方から問題にされる可能性を含む。

むしろ、行政罰としての過料よりも、商行為の相手方から詐欺行為であると指摘されることや契約の無効・取り消しを訴えられる可能性のあるこちらの方が問題であると言えるだろう。個人事業主と法人は大きく異なるもので、相手の信用を得ようとするあまり自分を大きく見せる行為は好ましくない。商売をしていると、こちらが法人であるかどうか、事業規模や年数はどの程度であるのかということを取引の判断材料にされる(あるいはその会社の規定で決まっている)ことがある。そんなときの無用のトラブルを回避するためにも、風呂敷を広げた表現は慎むべきであると考える。「自分は」「うちの事務所には」「私たちのお店では」といった表現が無難であると言えるだろう。

こちらの規模を問題にされて悔しい想いをした経験は数知れない。ただ、この規模だからこそ、応援してくださることが多いのだと感じることも多い。等身大、身の丈に応じた商売、自分には必要とされる場所があると信じて着実に仕事を行っていく気持ちは、どれだけの年数が経とうと失いたくはないと思う。

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