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突然社長が死んでしまうことを想定した中小企業の組織論 ~出来ることをやらない覚悟

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僕が小学生だった頃に父が発症して、医師からは「生きている人間の数値ではない」と言われたことを覚えている。眠れなくて布団をかぶると「死んで柩のなかに閉じ込められるのはこういう感覚なんだろうか」と思って苦しくなったこともあった。リーダーである家長に異変が起こって、途端に、僕たち家族全員の生活に変化が訪れたのは幼少の僕を抉る強烈な体験であったと言える。

そんな僕が経営者になっていつも意識していることは自分が突然死んでしまうことである。お客さんに喜んでいただくために仕事をすることは勿論であっても、自分が存在しなくなってその喜びを継続できないのは無責任なのではないか。自分を継承した人はその人の色でやってくれたらいい、ただ、既存のお客さんに対しては「現状+その人の色」であってほしい。では、現状、お客さんに選ばれている僕たちの色は何なのだろう。評価されているポイントは何なのだろう。そんなことをいつも考えながら、社内での意思統一と方向性を定める話し合いをするように意識している。「前川企画印刷らしさ」という言葉を多用するようになったのは、ここ数年の傾向だ。

中小企業は社長そのものが会社の看板ではあるというけれど

中小企業は社長そのものが会社の看板であるとよく言われるけれど、それは卵をひとつのカゴに盛るようなリスクのあることだと思っている。

自分の色を消して自分たちの色を出したい。そのために、あえて、自分で出来ることでもやらないようにしている。自分がやってしまえば1日で出来ることでも、与えて、待ってみる。任せた以上は失敗も許容する。「ほうれんそう」は、自分たちが失敗をしたときに上司の責任にするために行うものだという話もよくしている。だから動けばいい、途中経過をちゃんと伝えてどんどん動けばいい。失敗を財産だと思ってほしい。結果、そうやって人が強くなっていく土壌が自分たちの会社らしさだと考えてほしい。いつもそれを願っている。

チームの生産性向上を阻害する要因の一つに、「仕事の属人化」があります。これは「この仕事はあの人にしかできない」というような、ある仕事が特定の人物に強く依存してしまう状況をさします。

引用元:サイボウズ式:「自分でやったほうが早い」は、チームを滅ぼす――上手な仕事の任せ方 (1/2) – 誠 Biz.ID

失敗を前提とした土俵を与えることは上司の仕事の一つ。「お客さんに迷惑をかけるなよ」という想いはあっても、人のすることだ、何らかのミスでご迷惑をおかけしてしまう可能性は常にある。ならば大事なことはお客さんに迷惑をかけないために細心の注意を払いつつ、いざご迷惑をおかけすることになったとしても一度は許してもらえるだけの信頼の貯金を積み上げていく道を教示することなのかな、という風に考えている。

人は完璧じゃない。任せたことについては、僕は怒らない。叱ると怒るの違いは、どんな感情で沸騰しているときでも区別するようにしている。僕も何度も失敗をして、許されて、今ここにいる。ならば、同じだけの許容をしていかなければ、あまりにも虫が良すぎるというものだ。僕だってそれくらい、迷惑をかけたし、失敗も繰り返してきた。

人に仕事を任せるのは、手間ひまかかって面倒なものですが、チームの経験値を上げることにつながります。自分だけでやらずに「人に任せる」のは、チームの未来への投資ともいえるのです。

引用元:サイボウズ式:「自分でやったほうが早い」は、チームを滅ぼす――上手な仕事の任せ方 (2/2) – 誠 Biz.ID

ただし、失敗は許容するけれど、失敗に向かっていこうとしない消極性と先延ばしには言及をする。言われたことだけをするのは作業で、言われた以上の想像をして動くのが仕事。仕事をしないこと、失敗に向かわないことは自分の成長のチャンスを放棄しているのと同義だ。自分が伸びずして、お客さんやお客さんのお客さんの満足に貢献できるはずがない。これも毎日のように伝え続けて、「自分たちらしさ」が溢れ出るような意識を浸透させたいと願っている。

企業は人なり。任せることは、未来への種を蒔くこと。リーダーがあえて動かないという辛抱が光と水になるのだということを肝に銘じて、見守っていきたいと思う。