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売り手の論理と買い手の感情と 〜素麺の食べたくなった海辺の景色

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「素麺の食べたくなる景色」と聞けば、麦茶、畳、扇風機、高校野球などが連想される。入道雲を遠くに、氷は音を鳴らして夏を演出。この情景は僕たちの螺旋に刻まれていると言っても過言ではない。

ところで、この写真である。漁師さんの使う網。まるで素麺のようで、食べたくなって、思わず撮影をしてしまった。ここには麦茶も畳もない。なのに、だ。僕は僕の食欲と想像力に驚く。本能に訴えかける想像力のスイッチは、いとも簡単に入るのである。

広告や広報、コピーライティングの仕事をしていて思うのは、この表現が、誰の、どんな感情に働きかけるのかということの重要性だ。僕たちはセールス文句で買うのではなく、自分の感情がそれを必要だ、欲しいのだと思ったときに財布を開く。売り手の論理ではなく、買い手の感情。最優先するべきはいつもそう、買い手の気持ちを想像することなのである。

マーケティングや販促を生業とする人間たちが口にする理論は、すべて、感情の統計学。理論があって人が動くのではないということを忘れてはならない。

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セミたちの合唱、アスファルトを溶かす太陽の暴力。落ちる食欲に、優しく触れる冷たきものの誘惑。僕たちは感情と想像に生きている。商売を営む者は、理屈では人が動かないことを知る。

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