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小さな秋たちが打ち寄せるようにやってくる、高くなる空に本がますます読みたくなる

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芥川賞を受賞した羽田圭介さんの作品スクラップ・アンド・ビルド、同じく芥川賞作品である絲山秋子さんの沖で待つ、歌人の枡野浩一さんの短歌小説すれちがうとき聴いた歌を読んだ。

夏休みが始まった頃の夏祭りと、小さな秋たちが打ち寄せるようにやってくる頃の夏祭りでは、吹く風も染み込む色もずいぶん違う印象がある。茜色の空気に心が支配されるようになると、ずっと本と過ごしていたくなる。

いわゆる純文学と呼ばれるものはこれまでほとんど読んだことがなかった。「わかるわからない」で語られることの多い文学は、対象を表現するメタファーが川柳や短歌の短詩文芸に通じるものがあるのかもしれない。面白いかどうかという単純な評価ではなく、読後に訪れる何かを打ち鳴らされたようなままの心の残響に、自分も何かを表現したくなるのだから、今の自分にはとても重要な方向性の一つなのだと思う。

30歳までにはこう、40歳までにはこうという絵図があった。

父が病気を発症したのが今の自分と同じくらいの年齢だったので、40歳以降の未来は10回の表のスコアボードのように不確実性を伴う時間だった。最近になって少しずつ、そこからを想像して、そこからを語り始めるようになったのは、次のwantが見えてきたせいでもある。変化を求める挑戦には痛みを伴うことは間違いなく、今のままを逃げ切ることも選択肢としてないわけではない。それでも、痛みを克服しながら、継続する先にある景色を見てみたい気持ちは抑えられるわけがないと、自分が一番分かっている。

心が千切れるように辛いときにも、未来に塗り絵を重ねていきたいときにも、本は僕に、触れてこぼして、いろいろなものを与え続けてくれた。秋の気配は少しずつ、空は高くなっていく。同じくらいに、読みたい本も積み重なって高くなっていく。

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