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[短歌鑑賞]夕空が鳥をしずかに吸うように君の言葉をいま聞いている/大森静佳

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夕空が鳥をしずかに吸うように君の言葉をいま聞いている
大森静佳(twitter)
歌集 てのひらを燃やす (塔21世紀叢書)

第39回現代歌人集会賞、第20回日本歌人クラブ新人賞、第58回現代歌人協会賞とトリプル受賞をされた大森静佳さん。僕の好きなアーティストである一青窈さんが、敬愛する詩人の一人として名前を挙げている方でもある。こういう繋がり方は嬉しい。

17文字の川柳や31文字の短歌。それは無駄が削ぎ落とされて残った言葉に、瞬間の情景や香り、音や温度といったすべてが凝縮される短詩文芸。読み手は「止まった世界」に自分を重ねて、「それからの時間」に想像を膨らませる。正確な解釈は存在せず、委ねられて描く自由によってそれぞれのドラマが動き始める。

鳥の帰っていく真っ赤な空のした、2人は夢や未来を語りたがる。そして、同じくらいに抱く(ずっと続くのかな)という不安は口にできないでいる。耳に落ちてくる言葉に自分の影が在るのかどうか、その確かな複数形を探して一喜一憂を繰り返したのが、僕の青い日々、赤い空、白い未来を想ったテトラポッドの記憶。

鳥たちはしずかに吸われ、舟たちは遠慮がちに沖を目指した。月は僕たちの、どんな話を憶えているだろう。