商いの苦労を知っていた父は「おまえたちには商売人になってほしくない」と僕ら兄弟に言い続けた。結局、自分も弟も、その背中に憧れてこの道を生きているのだが、なるほど、だから父は口癖のようにそれを伝えたのだなと思うことばかりである。逝ってからもう幾年。経営者の友人は増えたが、父のような心意気の商売人にはまだ巡り会わない。父ならばどうするだろうと、苦境に立つたび、この血に聞いている。
結局は父の背中を追っている／谷口修平
川柳ふあうすと 2025年8月号
[川柳鑑賞日記]結局は父の背中を追っている／谷口修平
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