澤井の誕生日
なのに敗戦処理のようなことをさせて
心を疲弊させている
経営者の仕事は
関わる人全員を幸せにすることなのに
自分の判断ミスで
こんなに重たい道を歩ませていること
一度目の失踪のとき
彼を復職させていなければ
今はどんな風になっていたんだろう
✳︎
彼に頼んでおいた公金入金の書類が
封も開けずに放置されていた
銀行に行ってその処理をしていると
急に涙が溢れ出してびっくりした
真横にいる行員の方も戸惑っていた
何か書こうとペンを握ると震えたり
空気の壁を押して歩くような
ふわふわとした足取りを自覚したり
経営者なんだから
男なんだから
いい年齢なんだから
だからしっかりしないと
そう思えば思うほど
ひびの入った小さな器が
不安定な泥の丘の上に置かれて
風に吹かれ始める
コトン
*
彼のスマホは電源を切られたままだ
電話をしても繋がらない人たちが
こちらに連絡を向けてくださる
「また飛んだ?」
開口一番そんな風に言われて
君は飛行機やロケットにでもなったつもりか
滑走路にはごつごつとした岩が残されていて
僕たちは空に憧れながらも
ひとつひとつ
それを拾う作業に追われている
目的地なんて見えやしない
✳︎
一度目の失踪のときと大きく異なるのは
「がんばって」
と励まされることが減ったことだ
そりゃそうか、と思う
頑張れという言葉は時々、こころに重たい
一方でそれは
信用を失い
今後の仕事を失ったことも意味する
ブロックのように積みあがった未来が
冬の寒さに溶けていく
それはとても不思議で
だけど納得のいく感覚でもある
*
弱った自分の投稿を見て
FIST BUMP COFFEE ROASTERYが
わざわざ珈琲豆を差し入れしてくれた
神戸市西区、玉津インターの近くで
珈琲豆の焙煎・販売をしている彼です
馬鹿なんです
そんなことわざわざしないでいいのに
珈琲馬鹿でもあるんです
だからお店覗いてやってください
ええ雰囲気してるんです
ほんと馬鹿
ひとを泣かせるんじゃない
馬鹿