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ランドセルからはみ出していた30cm定規と、海底に沈んでいった1400mのパイプと、いつかの僕の夢の長さと

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ランドセルには30cm定規がはみ出していて、ファミコンのカセットは4980円だった。だから今でも、30cm以上の長さは感覚的に捉えられないし、5000円以上は大金だと思ってしまう。三つ子の魂百まで。僕の絶対的感覚とはそんな程度だ。

海洋研究開発機構は19日、海底掘削に使う長さ約1400メートル、重さ約75トンの鉄製ドリルパイプが地球深部探査船「ちきゅう」から脱落し、静岡県御前崎沖の南南東約52キロの水深約3600メートルの海底に落下したと発表した。周辺機器も含め約8千万円相当で、回収は難しいという。

引用元:1400mパイプが海底に落下 探査船「ちきゅう」から:朝日新聞デジタル

1400メートルもするパイプがどこで作られて、どんな風に運ばれていったのか。重さ75トンもする物体が、水深3600メートルの場所にどんな音を立てながら沈んでいくのか。いつか遠い遠い未来に、このパイプは誰がどんな風に発見するのか。それを発見する人たちの理科の教科書には、いったいどんなことが書いてあるのか。

多分きっと、起こってはいけないことが起こったのだろうと思うけれど、僕はもう、自分のランドセルでは想像することもできない数字の羅列に、ただただこのニュースに興奮して感動するばかりだった。技術は、僕の知らないところで、僕の想像できないような未来に向かってぐんぐん発展してる。ひとりひとりは小さくても、知恵と経験と失敗に立ち向かう心が集いあって、夢に日付を刻んでいってる。進歩はいつも、夢を描いて声に出すところから始まってる。すごい、ものすごい。

毎日、ノートの一ページ分、計算でも漢字でもいいから、何か勉強してきなさいと担任の先生に言われた。それが面倒で仕方のなかった僕は、ノートに大きな文字で言葉を並べて、詩の一節のようなものを綴り続けた。その感性が素晴らしいと、先生は僕のノートを読み上げては、黒板に書き写してクラスの皆に紹介してくれた。僕の「書く」は、怠惰と先生の褒め言葉によって始まったのだった。

そんな僕が、今は「書く」を生業の一つとしていて、次の夢は、同じように詩や文章を「書きのこしたい」と思う人たちの出版を手伝うことになっているのだから、不思議な感じがする。あのとき僕が計算ドリルを真面目にこなすような子どもだったら、いま、僕はこの夢の場所にけっして立ってはいなかっただろう。

夢を語れば笑われることもあるかもしれない。それでも、夢は公言しなければ、この旗に誰も気づいてくれないこともよくわかってる。だから僕は書くことへの誇りと、書いて伝えたいと思う同志たちにこの指にとまってほしくて、夢の続きをちゃんと言葉にしていきたいなぁと思ってる。

見上げるくらいの長い長い定規で、いつか、僕の走りぬいた夢の距離を測ってみたい。笑われてもいい、夢に未来に、真摯でありたい。