読書

ASKAさんの700番 第二巻/第三巻を読んだ

僕は実際には彼の物を盗んではいない。ところが、彼は周囲に「西端に盗まれた」と言って回ったとする。弱い立場の人間の発する言葉はいかにも信ぴょう性があって、僕はいとも簡単に罪びとに仕立て上げられてしまう。

「火のない所に煙は立たないんだよ」と、かつて、実際に、僕を責めた人がいた。
「だけど放火をする人だっているのではないですか?」

反論は届かない。涙を流す人が、指をさしながら「あの人が」といえば、僕は自分で「何もしていない」ことを証明しなければならなくなる。ところが、この世の中では「ある」ものよりも「ない」ことを証明するほうが難しい。「ある」や「ない」の証明ごっこに付き合わされてはたまらないと、中立の顔をして、僕から距離を置こうとする人も現れ始める。火事の現場にいて、ただ燃えて消えていく「これまで」を孤独に眺めるのは、本当に寂しいことだ。苦しいことだ。

僕の大好きなアーティストが、同じように苦しんできたことを著書で知る。もちろん、発端は、罪を犯したことであるから、ある程度は自業自得である。それでも、事実に起因するものと、それっぽく仕立て上げられた嘘とが混合されたなかで自分の印象を貶められ、これまでの人間関係を破壊されてしまうのはおかしい。

だから、僕は、「変わらない」気持ちで、次の言葉と楽曲を待ち続ける。「信じる」という言葉は「疑う」という気持ちを無理に否定しているような気がした。「変わらない」「変えない」「変わるわけがない」。もう、それだけでいいんじゃないかと思ってる。僕の周囲の誰に何を言われようと、軸とはそういうものだ。

言葉を持つこと、表現を持つこと。とても大切なことなんだと、改めて認識した。一気に読み終えた一冊だった。