川柳をこよなく愛する明石のタコ

神戸の印刷会社、前川企画印刷の代表ばたがお届けしております

短歌鑑賞

[短歌鑑賞]だまし絵に騙されあっていましたね でたらめにうつくしかった日々/笹井宏之

投稿日:2014年8月20日 更新日:

だまし絵に騙されあっていましたね でたらめにうつくしかった日々
笹井宏之
てんとろり

放課後や夏休みは永遠に続くように思われた。幾つもの夢を語り合って、世界は僕たちの手のひらをコロコロとした。悔し涙もたくさんあっただろうに、むかしむかしはいつもキラキラとして薄く開いた瞼の遠くに映る。約束はもう、笑い話になりましたね。

8月の折り返しを過ぎて砂浜の人影が減る。「なつがはじまった」よりも海が輝いて見えるのがいつも不思議。届きそうな気がして声を出してみる、届くはずがなくて声は波に消える。知っているよりも知らないことの多かったほうが幸せだったいつか。勢い、海は詩になっていく。

入れ替わった空気、月にバトンが渡るまで。何百回と横顔を眺めたような気もする、でもあるいは、ほんの数回のことだったのかもしれない。この時期のことは何度も詩に描いてきたけれど、波や汽笛やテトラポッドの感触を覚えているだけで、永遠の約束は言葉にもならない。薄い誓いを繰り返してばかりだったのか、それとも、淡い自分の傷付きやすさを知っているからなのか。

引用元:[短歌鑑賞]助手席のクーラーからは八月の土のにおいが漏れて 遠雷/山崎聡子 | 川柳をこよなく愛する明石のタコ

甘い夢や淡い約束はテトラポッドの上に置いてきたつもりで、時々、たらればの未来に飛んでいく束の間の遊戯。

引用元:[川柳]夏の背に忘れたはずの潮の音 | 短歌と川柳とマカロニと

日の暮れる早さを知るようになるのもこの頃。こうして、夏は残響になっていく。

Google

Google

-短歌鑑賞
-,

執筆者:

関連記事

[短歌鑑賞]ならべるとひどいことばにみえてくる頑張れ笑え負けるな生きろ/岡野大嗣

Amazonでサイレンと犀を購入すると、特典に安福望さんのポストカードがついてきた。安福望さんはこの本の装画と挿し絵を描いている方で、神戸の西の方、多分きっと明石に近いところに住んでいると思われる。 …

no image

[短歌鑑賞]トングにて肉の赤きを返しつつこの四半期をねぎらわれおり/松村正直

トングにて肉の赤きを返しつつこの四半期をねぎらわれおり 松村正直(blog) 午前3時を過ぎて (塔21世紀叢書) 空想であるのもリアルであるのも詩歌は自由。この歌はリアルそのもので、肉を焼く音やビー …

[短歌鑑賞]Googleにホットスポット記されず北北東の風に吹かれる/天道なお

Googleにホットスポット記されず北北東の風に吹かれる 天道なお(twitter/blog) NR 何年も通った校舎の前にいて、もう同じように帰ることはできないことを思って苦しくなる、こんなに。 賑 …

[短歌鑑賞]新しい朝が来たけど僕たちは昨日と同じ体操をする/木下龍也

新しい朝が来たけど僕たちは昨日と同じ体操をする 木下龍也(twitter) つむじ風、ここにあります 新しい朝という言葉には、普通、エネルギーに満ちた気配が伴う。「だからこれを始めよう」「生まれ変わっ …

[短歌鑑賞]多すぎる言葉を払い落したらきれいな空が広がっていた/中畑智江

多すぎる言葉を払い落したらきれいな空が広がっていた 中畑智江 同じ白さで雪は降りくる (新鋭短歌シリーズ15) 「愚痴なら聞くよ」「ほんと?」 ところが不幸話には、お互いの不幸が重なり始めてしまう。「 …

Google


↑成人式や卒業式、入学式に似合う髪飾り特集はこちら
(コトバノ監修/【ギフトにも最適、桐箱付】)
このブログの執筆者であり前川企画印刷の代表である西端がフォト詩集をiPhoneアプリで出しました。知識ではなく、感性に訴えかける写真と言葉たち。もし良かったら、もし良かったら…
follow us in feedly