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「魅力的な情報を発信」という言葉は使い古されている! 道の駅「あゆの里矢田川」の広報戦略に見る「ギャップを用いたセーラー服と機関銃の法則」

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

僕たちの仕事は「伝わる喜びを想像し、伝えるチカラを創造する」ことです。印刷や販促、ライティングやSNS活用などの各種相談は、それを実現するための手段にすぎません。

どう見せるか、よりも、どう見られるか

視点はいつも、自分側に置くのではなく、相手側に。
どう見せるか、というよりも、どう見られるか、ということに重きを置きます。

たとえば「役に立つ情報を一生懸命発信していきたい」というのは、これはお客さんの側からみれば、いたって当たり前のこと。目新しさがなく、差別化を考えるときに大きなメリットとはなり得ません。役に立つ情報を発信することを否定するのではなく、役に立つ情報を発信することは商売人として当たり前のこと。さらにプラスアルファ、なんの要素を付け加えるかというところが大切だと考えています。

今日紹介するのは、「日本一ダメな道の駅」「まじでつぶれる5日前」などの自虐的なコピーでSNSでの注目を増している「あゆの里矢田川」の記事です。

に新駅長の阿瀬大典さん(40)を迎え、慢性的な経営難からの脱却を目指す、兵庫県香美町村岡区長瀬の道の駅「あゆの里矢田川」が、インターネット上で存在感を増している。会員制交流サイト(SNS)などでは「まじでつぶれる5日前」などの、“開き直り”とも取れるメッセージを精力的に発信。崖っぷちの経営状況を自虐的に開陳する一方、現状を打破すべく、さまざまな企画を矢継ぎ早に打ち出している。

引用元:神戸新聞NEXT|但馬|日本一ダメな道の駅 資金15万円から再生へ奮闘

道の駅を広報する立場になって考えてみてください。

多くの人は「地元の魅力的な情報を発信し、ファンを増やそう」という風に考えるのではないでしょうか。しかしこれ、「地元の魅力的な情報を発信する」というフレーズに、僕たちがお客さん(情報の受け手)だったらどうかと考えてみてほしいのです。このキャッチフレーズは魅力的で新鮮なものでしょうか。使い古されたものではないでしょうか。「そんな素敵な情報があるのだったら、積極的にこの道の駅のメルマガやLINEに登録してみよう」と思うでしょうか。

大切なことは「当たり前の情報発信」を際立たせるための「ギャップ」

当たり前のことを当たり前に伝えているだけでは、それは魅力とはなりません。当たり前のことを際立たせるためには、僕はギャップが必要だと考えています。特に、(僕が仕事をしているのは)関西という地ですので、真面目には面白さが、面白さには真面目さが、という風に、対となるギャップが認められて、はじめて、その人のしている商売の「発信」に目が向くように考えています。

・通学途中の子どもたちに声をかける地域の優しいお巡りさん
・このお巡りさんが世界で一番インスタ映えしない理由

と書かれた見出しがあったとしましょう。皆さんは、どちらの記事に興味を持ちますか?

優しい警察官であることを否定しているわけではありません。インスタ映えしないお巡りさんのことを肯定しているわけでもありません。どちらの方が記事に興味を持って、この先にある記事を覗いてみたいと思ったか、ということです。

警察官が優しい、地域の警察官という言葉の組み合わせは、相性が良過ぎて馴染んでしまうということがお分かりいただけるのではないでしょうか。僕はこれを「景色になる」現象だと思っています。そこに電信柱があり、そこにポストがあると、当たり前すぎて人の記憶に残らない。これがたとえば、スーツ姿の人たちが多く歩くビジネス街に、ぽつんと、川柳を詠む着物姿の人間が畳を敷いて座っていたらどうでしょう? 「そういえば今朝、通勤途中でこんな人を見かけたよ」と話題にしたくなるのではないでしょうか。

ギャップを利用して目を向ける「セーラー服と機関銃の法則」

ギャップを利用して目を向ける作戦を、僕は「セーラー服と機関銃の法則」と呼んでいます。むかし有名になった映画ですが、これが「セーラー服と校舎」だったら、きっと印象には残らなかったことでしょう。組み合わせとして一般的ではない、なじみがないものだからこそ、記憶に留まりやすくなるというわけです。

「情報を発信する」「お役立ちを目指す」というのは姿勢としては大切なこと。それを否定するものではありません(むしろ絶対必要なことです)。ただ、広報という視点で考えるときは、この言葉はありがちな、使い古されたスローガンであるような印象を与えてしまいます。「有意義な情報を発信していきますので、メルマガに登録してくださいね」という響きには、もう、ほとんど、効果はありません。

セーラー服には機関銃という響きがギャップになって、気を惹く効果を生みました。
さて、皆さんのそれぞれの商売、皆さんそれぞれの個性には、どんな「ギャップ」が効果的でしょうか。

あえて相性の良いキーワードを外して、ギャップのある言葉を選んでいく。こんなところにも「言葉のチカラ」は活用できるのだということをお伝えしたい、道の駅あゆの里矢田川さんの記事でした。

みちの駅あゆの里矢田川さんのホームページ(内容もぶっ飛んでいて面白いですよ)

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